
平成21年4月25日、東京都三鷹市にある三鷹市芸術文化センター・風のホールで行われたコンサートの合間にお話を聞きました。横山幸雄教授自身が企画した、ショパンの生誕200年にあたる2010年をゴールに据えてショパンの足跡をたどる連続企画の第4弾です。終演後も拍手が鳴り止まない感動的な公演となりました。
「ショパン・プロジェクト」は2 0 1 0年のショパン生誕200年に向けて、その軌跡を全8回シリーズでたどっていくものです。今日演奏した「風のホール」は自分が生まれた場所に近いこともあり、すごく好きなホールのひとつ。この場所でショパンの作品を年代順に追っていきたいと思い、僕自身が提案して実現しました。
今日は折り返しとなる4回目ですが、早熟の天才といわれたショパンはまだ20代半ば。1838年作の「24のプレリュード」をメインに中期の小品を演奏しました。ピアノを始めた頃からショパンが好きで、僕が音楽家としてのキャリアをスタートさせるきっかけとなったのも「ショパン国際コンクール」での入賞でした。だからショパンの作品を弾くと、自分のホームグラウンドに戻ってきたような感覚があります。
これまで年齢もタイプも異なる様ざまな先生に学び、それぞれにいい刺激を受けてきたと思います。しかし、き詰めていくと芸術とは最終的には個人の才能です。教える側にできるのはその才能が開花するよう、全力で手助けすることです。成長の過程において練習方法や考え方等身につけておけば将来必ず役立つであろうことは、積極的にアドヴァイスしていきますが、すべてを一から十まで手取り足取り教えるのではなく、時には突き放したり、議論したり、また模倣させたり…。生徒が自分で考えることを放棄してしまわないように工夫しています。
たまに学生が僕が一度も弾いたことのない曲をレッスンに持ってくることがあるのですが、その場合、自分なりに勉強し、たとえば次の自分のステージで弾くことを想定して教えることにしています。演奏家と指導者のふたつの視点を持って学生に接することは、僕個人は有意義であると思っています。
また、上野学園では室内楽をはじめ、一流と呼ぶにふさわしい先生方と一緒に練習できる機会が充分に得られます。自分の専攻楽器ではなくても本物の音に直接触れることで、多くのことを学べると思います。
音楽大学を受験しようとする人の中には、物心がつく前から音楽を始めて、遊びに行きたいときも我慢して練習を重ね、優秀といわれるレベルを保ったまま音大の門の前まできた、という人が多いのではないでしょうか?そこで問いたいのが、自分は音楽が好きなのか、自分はこの曲をどう感じるのか、といった気持ちです。
ただ目の前のハードルをクリアしていくのではなく、自分がどう表現するかという、音楽の原点を自覚してほしい。教える側はレッスンを通じて潜在能力を引き出し、表現を完璧にするためのサポートをします。しかし、まず自分にどう表現したいのかという自覚がなければ先に進むことはできません。
自分が本当にやりたい音楽を見つけ、そこに向かって邁進していってほしいですね。