UEGAKU JOURNAL VOL.1

教育特集
一生ものの力を身につける、
上野学園の学び。

目の前の目標だけにとらわれず、
音楽そのものへの愛に、
日々思いを馳せて。
植田克己 特任教授
東京藝術大学音楽学部及び大学院修了。伊達純、松浦豊明の各氏に師事。在学中に第38回日本音楽コンクール入選。1971年安宅賞、1973年にクロイツァー賞を受賞。デトモルト北西ドイツアカデミーに留学、引き続きベルリン芸術大学にてクラウス・シルデ氏に師事。1977年ロン=ティボー国際コンクール第2位。N響、都響、札響、大フィル、九響、ドイツ・バッハ・ゾリステンなどと協演。ソロはもとより室内楽奏者としても幅広く活躍している。元・東京藝術大学音楽学部教授、及び音楽学部長。

本学へ来てまだ2年目を迎えたばかりですが、印象的に感じているのは、学生のみなさんのモチベーションが高く、とても生き生きと勉強なさっているということ。そして、これは驚きでもありましたが、年度末の演奏試験が国際コンクール並みの難度・量であることです。厳しい試験、過酷な課題に真摯に立ち向かうことで、即戦力として活躍できる力を養えると期待しています。また、コンクールに積極的に挑戦している学生も多く、ひとりの若い演奏家としてかけがえのない刺激を受けていることでしょう。

演奏試験やコンクールで自分を試す、競い合う環境に身を置きたいという若者らしい感覚は、とても素晴らしいものです。ですが、同時に私が普段から学生たちに話しているのは、長い目で見たときに大切なこと、つまり音楽そのものに対する思い----とても基本的なことですが、自分は本当に音楽が好きなのか、ピアノを愛しているのか----普段からそういうことも考えながら勉強して欲しい、ということです。

試験やコンクールなど目の前の目標に向かっていくことも必要ですが、それが終わって突き抜けたあとも、自分の中に大事なものを探し求めていって欲しいと思うからです。

大学生になると、難しい曲にどんどん挑戦していきますが、難しさの克服と美しさの会得というのは、ともすると分離しかねません。私自身も若い頃は弾くのに必死でしたし、もっと難しい曲を上手く弾きたいという欲求は当然あるものです。そのためにここで専門的な勉強をするわけですが、ではその中に本当に自分の求めている「美」があるのかどうか。その探究も、忘れないでいて欲しい。もちろん、自分なりの美の基準が本当にいいものかどうか確かめるためには、周りもよく知り、たくさんの引き出しを持っていなくてはなりません。

そして、自分の想像力やファンタジーに任せて弾くだけでなく、何百年もずっと楽譜が残り続けているということの意味にも、想像を巡らせてみて欲しいと思っています。楽譜として残っている偉大な音楽をどう読み取り、自分の求めている美をどうミックスさせるのか。最終的には本人だけが見つけ出せるものですが、そこにたどり着くまでのヒントはいくらでも、惜しみなく提供していきます。

STUDENT VOICE

2人の先生からの
違う視点でのアドバイスが
視野を広げてくれます。
演奏家コース ピアノ専門 2016年入学
相澤ますみさん/千葉県立佐倉高等学校出身

音大進学は中学の頃から考えていました。上野学園を選んだ理由は、千葉の実家から通いやすく、何より練習室や環境面が充実していたからです。なかでもレッスンで複数の先生に師事できることは、大きなメリットだと感じています。私は植田克己先生と中島彩先生に師事していますが、2人の先生に違った視点からのアドバイスをいただけることで、とても視野が広がっています。
植田先生はとても深い知識をお持ちで、いつも細部まで丁寧に指導してくださいます。たとえば今見ている楽譜だけでなく、ほかの楽譜との比較も含めて教えてくださり、楽譜と多面的な視点で向き合うきっかけをくださいます。一方、中島先生は手の小さな私よりもさらに手が小さいのですが、プロの視点から小さな手に適した弾き方、姿勢などを論理的に教えていただき、自信につながっています。

和気藹々としながらも
真剣に音楽と向き合う。
そんな仲間たちの
姿勢も刺激に。
演奏家コース ピアノ専門 2016年入学
会田美香さん/東京音楽大学付属高等学校出身

特待生制度が充実していることが、上野学園への進学の決め手。大きすぎず小さすぎない、ちょうどいい規模感も気に入っています。学生のみならず先生方も和気藹々としていて、音大にありがちな派閥のようなものもありません。そんななかで、個人プレイに走らず、みんなが助け合いながら真剣に音楽をしている。私自身、助けられることがよくあります。
また、毎週コンスタントに120分の個人レッスンを受けられる環境も非常に魅力的です。師事している植田先生のレッスンはとにかく丁寧で、納得度が違います。なかなか曲想がつかめない時も、悩みに対して的確なアドバイスをくださり、実力が伸びていくのを実感しています。レッスンやコンクールなどで数多くのピアニストを見てこられたからこその、「なるほど」が詰まった充実のレッスンです。

自分の言葉を話せる
オーボエ奏者に。
実技とリードメイキングを
両軸で磨く。
広田智之 特任教授
1963年山口県生まれ。国立音楽大学在学中に日本フィルハーモニー交響楽団に入団。第10回管打楽器コンクール入賞。1988年~2000年8月まで同団首席オーボエ奏者。2000年9月にソリスト・デビュー、東京、大阪などでリサイタルを行う。2001年9月~2004年8月まで、日本フィルにわが国のオーケストラとしては初のソロ・オーボエ契約で迎えられ、2006年より東京都交響楽団首席オーボエ奏者。紀尾井ホール室内管弦楽団、晴れた海のオーケストラ他のメンバーとしても活躍。日本オーボエ協会常任理事。

国内有数のオーボエコンクールでの上位入賞や、オーケストラへの入団など、近年特にめざましい成果を出している本学のオーボエ専門。その大きな特色のひとつと言えるのが、リードメイキングに関する独立したレッスンがあることです。

オーボエ奏者にとってリードは非常に重要なもの。プレイヤーを生かすも殺すも、最終的にはリード次第と言っても過言ではないくらいです。本学では、実技とリードメイキングを両軸とし、両方をバランスよくスキルアップしていくことを目指しています。「自分の言葉を話せるオーボエ奏者に」。自分の音は自分で責任を持って作るということが、オーボエ奏者として音楽の世界で本当に活躍するためには大切なのです。

個人レッスンにも特色があります。オーボエ専門では私を含め4人の教員が情報交換しながら連携して指導しており、たとえば学生が抱えている問題に対していろんな角度からアプローチしています。ある教員から指摘されたことをすぐには理解できなくても、別の教員に違う角度から指摘されそのうちにわかっていく、ということもよくあります。さらに、ほかの学生のレッスンもいつでも自由に聴講OK。そこで得る自分とは違うケースの問題も、大事な学びとなります。

こういった学びが可能な理由は、個人主義ではなく皆で協力して伸びていこうという学生、そして教員陣の姿勢にあると思います。互いにいい影響を与え合い、時にミラクルすら起こしてしまう。そんな素晴らしいクラスだと自負しています。我々教員も、上野学園卒のプロプレイヤーをたくさん輩出していくという意気込みで、日夜努力しています。

STUDENT VOICE

演奏家コース オーボエ専門 2015年入学
伊藤千裕さん/千葉県習志野市立習志野高等学校出身

人生で初めて聴いたオーボエの音が、広田先生の音でした。こんな音になりたいという強い思いと、リードレッスンやリード製作環境の充実度から上野学園を選びました。レッスン室も整っていますし、レッスンは毎回が学びの連続。とてもいい環境で、濃密な毎日を過ごしています。

演奏家コース オーボエ専門 2017年入学
吉田柊平さん/埼玉県川口市立川口高等学校出身

4人の先生のレッスンを受けることができるのは大きな魅力。いろんな角度からの意見を聞き、自ら考えることで、発想力も豊かになります。自分の実力をはかれるだけでなく、本番の機会をできるだけ多くつかみたいという思いからも、コンクールにも積極的に挑戦しています。

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