ピアニストとしての大事なことを学んだ上野学園。
ここで友達と過ごした時間が、音楽にも生かされています。
ー上野学園時代の印象的な思い出をお聞かせください。
ちょうど僕がはいった年から男女共学になりましたが、女子校だった流れから女子の多い環境で、仲の良かった友達もほとんどが女の子でした。学食で食べたり、ピアノの話をしたり。そんな普通の学生生活を送れたことは、とても新鮮であり、大切な経験になりました。
ーヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール優勝からもうすぐ10年。当時を振り返って思うことは?
まさか優勝するとは思っていなかったのですが、でもとても嬉しかったですね。準備もかなり大変でギリギリの状態でしたが、よくこんなに過酷なコンクールを勝ち抜くことができたなと、よくやったなと。自分でも本当にびっくりでした。
ーコンクールに向けて、どのように準備をしていったのですか?
コンクールの1年前くらいから、意識し始めていました。周りの方からの勧めもあり、悩みながらも自分の成長のためと決断しました。
コンクールでは新曲課題曲としてアメリカ人作曲家の新曲(ジョン・マスト「即興曲とフーガ」)を演奏したのですが、楽譜を渡されたのは本番1ヶ月前。もちろんほかにもたくさんの曲を用意しなければいけなかったので、本当に1日中ピアノに向かっていましたね。大変さとしては、自分の予想をはるかに超えていました(笑)。
ー修羅場のような状況をくぐり抜けたことで、ご自身に変化はありましたか?
とても自信になりましたし、優勝後いろんなところで演奏できるようになったことで、さらに少しずつ自信がついて、成長できて。やはりあの時、コンクールを受けてよかったと、今でもずっと思っています。
ー舞台で自分らしく演奏するために心がけていることはありますか?
聴いていただく方に楽しんでいただけるような演奏をしようと、いつも思っています。自分自身もピアノを弾くことが楽しいですし、その気持ちは小さな頃から今もずっと変わっていません。もちろん弾く前は緊張しますが、弾き出したらリラックスして音楽に集中できるし、楽しんで演奏しています。それはコンクールでも同じでした。結果は気にせず、皆さんに楽しんでいただこうという気持ちで演奏していました。
ー上野学園での学びのなかで、今も役立っていることはありますか?
有名な演奏家の方々がたくさんいらっしゃる環境のなかで、ピアニストとしての大事なことを学ぶことができました。たとえば本番に向けての心構え、コンクールを受けるうえでの選曲の仕方やホールでの弾き方など。コンサートや国際コンクールを数多く経験していらっしゃる方々から、自らの経験をもとに教えていただいたことは、今、自分自身がプロとしてやっていくうえでの礎にもなっています。
優勝後は忙しくなってしまい大学で過ごす時間は少なくなってしまいましたが、コンクールでは上野学園で学んだ経験が生かされていますし、先生方もすごく親身になってレッスンしてくださいました。皆さんのおかげで優勝できたと感じています。それに学生生活自体も楽しかった。同じ音楽をやっている仲間と刺激しあって過ごした経験も、音楽にプラスになったと思います。
ー最後に、受験生の皆さんにメッセージをお願いします。
練習ももちろん大事ですが、お互いに刺激し合える仲間と一緒に過ごす時間も大事。皆さんも、夢に向かってたくさん挑戦して、友達もたくさん作って、楽しい学生生活を送ってください。
辻井伸行 さん Nobuyuki Tsujii
2011年 演奏家コース/ピアノ専門 卒業
Q. 気分転換にしていることは?
A. 陶芸や釣り。たまに温泉に入ったり。新しいことに挑戦するのが好きです。いろんなことをして気分転換をしてリフレッシュすることが、音楽にもプラスになっていると思います。
Q. 辻井さんにとってピアノとは?
A. 体の一部のようなもの。友達のようなもの。小さい頃からそうで、今もその気持ちは変わりません。表現の幅が広いですし、自分を表現できるものだなと思っています。