本学へ来てまだ2年目を迎えたばかりですが、印象的に感じているのは、学生のみなさんのモチベーションが高く、とても生き生きと勉強なさっているということ。そして、これは驚きでもありましたが、年度末の演奏試験が国際コンクール並みの難度・量であることです。厳しい試験、過酷な課題に真摯に立ち向かうことで、即戦力として活躍できる力を養えると期待しています。また、コンクールに積極的に挑戦している学生も多く、ひとりの若い演奏家としてかけがえのない刺激を受けていることでしょう。
演奏試験やコンクールで自分を試す、競い合う環境に身を置きたいという若者らしい感覚は、とても素晴らしいものです。ですが、同時に私が普段から学生たちに話しているのは、長い目で見たときに大切なこと、つまり音楽そのものに対する思い----とても基本的なことですが、自分は本当に音楽が好きなのか、ピアノを愛しているのか----普段からそういうことも考えながら勉強して欲しい、ということです。
試験やコンクールなど目の前の目標に向かっていくことも必要ですが、それが終わって突き抜けたあとも、自分の中に大事なものを探し求めていって欲しいと思うからです。
大学生になると、難しい曲にどんどん挑戦していきますが、難しさの克服と美しさの会得というのは、ともすると分離しかねません。私自身も若い頃は弾くのに必死でしたし、もっと難しい曲を上手く弾きたいという欲求は当然あるものです。そのためにここで専門的な勉強をするわけですが、ではその中に本当に自分の求めている「美」があるのかどうか。その探究も、忘れないでいて欲しい。もちろん、自分なりの美の基準が本当にいいものかどうか確かめるためには、周りもよく知り、たくさんの引き出しを持っていなくてはなりません。
そして、自分の想像力やファンタジーに任せて弾くだけでなく、何百年もずっと楽譜が残り続けているということの意味にも、想像を巡らせてみて欲しいと思っています。楽譜として残っている偉大な音楽をどう読み取り、自分の求めている美をどうミックスさせるのか。最終的には本人だけが見つけ出せるものですが、そこにたどり着くまでのヒントはいくらでも、惜しみなく提供していきます。
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